30 概念を描く

雪舟

雪舟は備中(岡山)生まれの日本人で、室町時代の絵描きですね。この山水画は中国で制作されたと言われています。彼は40代後半で中国に渡り、約2年ほど本場の絵を学んでいます。この四季山水画は全部で4幅あるシリーズもので、各幅は春、夏、秋、冬をテーマに山岳風景が描かれています。一幅のサイズは巾75cm、高さ150cm もある大きなものです。描かれたのが中国だとしたら、その風景も中国のものだということになりますが、ここに描かれた風景は実際に存在する可能性は低いのです。なぜなら画面に登場するロバに乗った仙人、松の木々、小さな滝、民家や寺、遠くの岩山といったものはあくまでフィクションであり、山水画に「あるべき」ものとして理想的な姿で描き出されていると言われているからです。雪舟の頭には各季節それぞれのふさわしい風景が概念として存在していたと考えられます。

四季山水画 1470年頃 by 雪舟