6. エッセンスの応用

68/75 身体寸法と幾何学

レオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人間」です。ユーロ硬貨の図柄に使われるほどよく知られた絵ですが、実はダ・ヴィンチが残した膨大なノートの中で、プロポーションの法則について記した部分の一葉に描かれたものです。現在、ベネチアのアカ…

30/75 移動する「部屋」

ゲル(中国語でパオ)で生活しているモンゴルの人々です。彼らは草原を移動して暮らしていますね。彼らのように生活の場を移動させて暮らすスタイルでは、「家」という概念が一般的な感覚とどのように違うのでしょうか? 本来、家は動かないものです。だから…

09/75 「透けた」空間

建築家西澤文隆氏は「透ける」という言葉で日本建築のよさを語りました。「適当に遮りながら完全には遮らず空気を流動させる透けた空間こそ、わが祖先が風土に根ざして獲得した快適な住まい方であった」ここには、日本人の生活の知恵に基づく良質な建築空間…

05/75 ソーク研究所の水路

カリフォルニアにあるソーク研究所 Salk Institute の中庭です。ここには感動的な仕掛けがあります。大平洋に向かってのびる1本の水路が太陽の沈む位置を指し示すのです。年に2回、春分と秋分の日、正確に水路と日没点が一致します。 水路はこの施設全体の…

03/75 水平は人工物

アテネにあるアゴラ博物館です。ストアを復元して博物館として使っています。ギリシア時代、この辺りにアゴラがありました。アクロポリスの丘を望む、古代アテネの中心地ですね。政治経済の中枢をなした場所です。アテネの道は全てアゴラに通じていました。…

01/75 立体都市ユニテ

ル・コルビュジェ Le Corbusier がマルセイユに設計したユニテ Unite d'Habitation は、立体的な都市です。基本的には大型の集合住宅ですが、住戸以外のじつにさまざまな施設が建物内に計画されているんですね。最上階に幼稚園、屋上には公園、プール、体育…

74/75 構造

構造家セシル・バルモンド Cecil Balmond のスケッチです。 「レム・コールハースから電話。いつもながら慌てたような声。思いつきと野心に満ち、言葉は極端な両義性の上に美しく位置づけられている。彼の依頼は変わったものだった。ボルドーのヴィラを「飛…

73/75 壁

ベルリンの壁です。ポツダム広場周辺だと思われます。もちろん現在は撤去されてありません。この写真で見るように鉄道の線路までも分断する絶対的な存在でした。ベルリンの壁は東から西へ市民を亡命させないという機能を超えて、東西分断の象徴でした。 壁は…

70/75 様式の真理

ルネッサンスによって古代ローマの文化が見直され「古典=クラシック」が成立した。とりあえず、そう考えてみます。 建築の分野でも、様式のオリジナルは古代ローマの建築物にあるとされていますね。美しく調和のとれたデザインを理想として、古代ローマの建…

69/75 エネルギーの塊

新宿の超高層ビルが建設中の様子です。30年くらい前のことですね。ビルのてっぺんにクレーンを載せて建物の部材を吊り上げています。 建築物はエネルギーの塊です。これは2つの面から説明できるでしょう。1つは位置エネルギーから。もう1つは燃焼エネルギ…

68/75 垂直線

教会には垂直線がたくさん見つかります。初めて中に入ったとき、誰でも視線を下から上にあげることでしょう。高い高い天井を圧倒される気持ちで見上げるものです。 垂直線は空間の垂直性を演出する最も強い要素です。教会の場合、その垂直性は「神」を感知す…

67/75 未来に向かう意識

古典建築のお手本は過去にありました。ギリシアやローマで古代につくられた建築に真理を見い出していたのですね。一方、現代建築は未来に理想を求めているように思います。例えば我々はよく「計画」という言葉を使います。建築計画、基本計画、都市計画など…

66/75 建築様式の時代性

ゴシック様式の建築です。といっても1920年代に米国シカゴでつくられたものです。シカゴトリビューン社 Chicago Tribune の超高層ビルですね。有名な国際コンペ(設計競技)で選ばれた優勝案です。設計者はレイモンド・フッド Raymond Hood なぜ20世紀に建て…

65/75 様式の起源

クレタ島クノッソス Knossos, Crete の発掘現場です。ミノア文明 Minoan の中心地だったクノッソス宮殿があった場所です。英国の考古学者エヴァンズ Sir Arthur Evans によって調査が進められました。1900年頃のことです。 建築の様式には起源があります。そ…

64/75 命

この写真は、横浜、石川町あたりの様子です。戦後の焼け跡ですね。こういう状態を見ると、人間や建築の原点が何かを考えさせられます。ひとも建物もまちも、地上の全てがぎりぎりのむきだしになった姿をさらしている。当時の人々は「命」ひとつ助かれば、あ…

63/75 最初の意志

サハラ砂漠の集落です。厳しい自然条件でも、こうして人々が暮らしているのです。 人々がいつ頃から、どんな理由でこの場所で暮らしはじめたのか。気になるところですが、それはさておき、ここで言いたいのは、どんな集落でも、最初の礎(いしづえ)を築いた…

62/75 時の経過

東横線の渋谷駅です。扇型のパネル壁が印象的ですね。長年、多くの人たちに親しまれています。 建築は「時の経過」に立ち向かう存在です。そのおかげで、人間は物理的以上に精神的な安全を建築から得ることができるのです。 建築は人間を雨風や外敵から守り…

60/75 図面と模型

磯崎新の水戸芸術館の模型です。磯崎はコンセプトを最も重視する建築家です。建築はたとえ実現しても、数百年も経てば壊され、地上から消滅してしまう。しかしそのコンセプトは絶対に消滅しない。建築史の琴線にふれれば、千年でも生き続ける。そんな信念を…

59/75 睡眠

コルビュジエの別荘、cabanon のスケッチです。地中海を望む小さな丸太小屋ですね。彼は夏の間、ここで睡眠をとり、思索をし、ここから海に泳ぎにゆくことを楽しんだようです。最小限の簡素な生活を好んだんですね。 ところで、睡眠に必要なスペースは、建物…

58/75 構築と重力

スペース・ステーションの内部の様子です。この部屋には重力がありません。パソコンが空中に「置かれて」います。作業に必要ないろんな道具類が壁や天井付近に備えられています。無重力空間が一体どんな感じなのかは体験しないと実感できませんが、ものをテ…

57/75 部分と全体

ペンシルバニア大学リチャーズ医学研究棟 Richards Medical Research Laboratories, University of Pennsylvania が建設中の様子です。設計したのはルイス・カーン Louis I. Kahn 、1960年代の作品です。プレキャスト・コンクリートを使い、階段室や設備ダク…

55/75 開口部

建築の開口部は壁や屋根に開けた孔です。窓とは区別すべきですね。一般的に開口部と言えば、壁に設けて設備用の吸排気口にしたり、ダクトを通す貫通孔に使ったりします。当然、枠を取り付けて窓にすることもあります。 日本の伝統建築に開口部の考え方をあて…

54/75 建物の重さ

建物の重さは建物自体の重さと載っている荷物や人の重さの合計です。建築基準法では前者を「固定荷重」後者を「積載荷重」と呼んでいます。この分類だと、もう一つ「積雪荷重」が加わります。 さて、ここで簡単に建築基準法を参照して「積載荷重」についてみ…

湿度こそ決定的 53/75

京都にある「苔寺」こと西芳寺の庭です。これは黄金池に架かる小さな橋ですが、渡る部分が地面から連続して苔に覆われていますね。ここまでになるのに、どれくらいの時間が経ったのでしょうか。 「苔寺」の庭は日本文化を代表する美しい庭です。その独特な「…

スペースをわける床と壁 52/75

床スラブを積み上げて一つの建築を成立させる。このアイディアはミースによって定式化されたと言われています。高層ビルの原点です。床を上に上に積んでゆけば、当然必要な面積がいくらでも確保できる訳ですね。こうした発想が生まれた背景に、都市における…

本と建築 51/75

本は建築家にとって重要なメディアです。本は情報源であり、自己宣伝の媒体です。そして自分の作品をいつまでも生き続けさせたいと思う建築家は本の力を頼るでしょう。古くはパッラーディオ、新しくはレム・クールハースが本というメディアを利用して成功し…

距離と時間 50/75

ライトの「落水荘」Fallingwater ; Kaufmann House の平面図です。大きな特徴は部屋が連続しているところです。通常の建物の平面図は、四角形の部屋が廊下でつながれていて、部屋の四隅が明確です。それに対して、ライトの平面図はスペースが流れるような印…

人間のおもい 49/75

長野県松本市にある旧開智学校の校舎です。現在は記念館として一般公開されています。開智学校は小学校として明治9年に開校し、昭和38年に閉鎖されるまでの約90年間、信州における教育の中心校として人々に愛され続けてきました。写真の校舎は、90年間の使命…

風土 48/75

東京、築地にある中央卸売市場です。ここは冷凍マグロのせりが行われる場所です。マグロは日本食には欠かせない食材ですね。 食事はその土地土地の「風土」を反影します。あるいは、するべきです。港町に行けば海の幸、内陸の町に行けば山の幸。それらを使っ…

祭り 47/75

祭りと建築は似ています。地域の人々を始め、たくさんの人たちが一つの目標に向かって協力する一期一会のイベント。実際、建設現場で働く職人さんは、まちの祭りでも神輿の担ぎ手などで活躍していることが多い様です。 これは長野県諏訪の「御柱祭」の様子で…