68/75 身体寸法と幾何学

ken1062007-04-11

レオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人間」です。ユーロ硬貨の図柄に使われるほどよく知られた絵ですが、実はダ・ヴィンチが残した膨大なノートの中で、プロポーションの法則について記した部分の一葉に描かれたものです。現在、ベネチアのアカデミア美術館が所蔵しています。

絵のタイトルの「ウィトルウィウス」とは建築家の名前です。ダ・ヴィンチは彼の著作に刺激されてこの絵を描いたので「ウィトルウィウス的人間」と呼ばれているのですね。

ウィトルウィウス的人間」は人間の身体に、美しい調和のとれた比例が見いだせることを示しています。

よく見てみると、円の中心がちょうどへそにあたっています。へそを中心として、手の先と足の裏までがちょうど半径です。また、男の身長は両手を広げた長さに一致しています。つまり人間が円と正方形にきれいに収まっている訳ですね。身体寸法を幾何学でみごとに分析し得ています。

幾何学は建築のバックボーンです。建物の機能と美しさは、人間と幾何学を結びつけることで正しい解答を得てきたのです。

ところで、日本の伝統建築は座って使うことを前提にしています。例えば、畳敷きの座敷は空間の重心が低く、正座すると落ち着くようなしつらえです。正座は肚(はら)と腰を基本とする日本人独特の生活スタイルであり、一つのユニークな文化ですね。

ちょっと唐突ですが、正座の姿勢を幾何学と結びつけるとどうなるのでしょうか?「ウィトルウィウス的人間」の正座版です。