ウィトルウィウス

vitruvius

ウィトルウィウス 
Marcus Vitruvius Pollio
(actually lived between 46BC-30BC)

ウィトルウィウス古代ローマの建築家です。一度忘れ去られた存在になりましたが、ルネッサンス時代に「再生」した人物ですね。「建築十書」の著者として知られています。実作は現在のところよくわかっていません。

彼の「建築十書」は世界最古の建築書とされ、ルネッサンス以降多くの読者をもつベストセラーです。ウィトルウィウスは「建築十書」の中で当時の建築家が知り得た広範な内容を詳細に記述しました。

例えば建築家のもつべき知識として、家を建てる術、強用美、土地の選び方、太陽と方位について、熱と湿度について、朝の風、公共の場所の選定方法、神殿と円形劇場、煉瓦について、セメントの壁、石灰と割石の混合法、石切場、木材の伐採時期、柱の比例関係、エンタシス、階段、ドーリス式とコリント式、バシリカ音楽理論、浴場の配置、衛生、顔料の産地、川と泉、月の運行、12星座、見積もり、工期、、、、、。

といった内容が記述されています。ローマ時代の建築家がもっていた知識が具体的にわかって興味深いですね。

「5つのオーダー」「強用美」「ウィトルウィウス的人間」などは「建築十書」から生まれたものです。「ウィトルウィウス的人間」とはダ・ヴィンチが描いたスケッチで、「建築十書」の一葉にある「両腕を広げた時の長さは背丈に等しい」という記述にダ・ヴィンチが刺激を受けて作成したものですね。

ウィトルウィウス自身については生年も没年も現在のところわかっていません。シーザー(カエサル)とアウグストゥスに仕えたこと、幾つかの実作があったことなどが記録に残っているだけです。ちなみに「建築十書」はアウグストゥスに捧げられました。ウィトルウィウスが生きた時代はローマが共和国から帝国になる変動期でした。

ウィトルウィウスは今で言うエンジニアでもあり、軍事的な専門知識があったため皇帝の側近として北アフリカの戦役に従軍したことが分かっています。

修道院の倉庫で「建築十書」が再び発見されたのはルネッサンス時代になってからです。1400年近くが過ぎていました。発見したのはアルベルティです。最初にこの本の価値に気がついたのがアルベルティだったのですね。「建築十書」は1486年にローマで出版されました。