36/75 「建築十書」

ken1062007-02-16

ウィトルウィウス Marcus Vitruvius Pollio の「建築十書」De Architectura は、古代ローマ時代に書かれた最古の建築書として知られていますが、実際に広く読まれるようになったのはずっと後になってから、15世紀以降でした。実はウィトルウィウスによって書かれてから、約1400年近く歴史の闇にあったのです。
著者のウィトルウィウスはシーザー(カエサル)に仕えた建築技師です。残されたわずかな記録によると、彼は紀元前46年、シーザーのアフリカ遠征に従軍したことが分かっています。クレオパトラアウグストゥスの時代の人でした。
「建築十書」の内容は、建設技術から建築論まで含む幅広いものです。前書きには、この本をアウグストゥスに捧げると書かれています。しかし、その後この本は忘れられた存在になりました。
再び歴史の舞台に現われるのは、イタリアがルネッサンスを向かえた時です。古い修道院でほこりをかぶって眠っていた「建築十書」を発見し、世に送り出したのはルネッサンスの巨人アルベルティー Leone Battista Alberti でした。
彼の紹介によって「建築十書」は古代ローマの書物として注目を集め、1486年にローマで初めて出版されています。ダ・ヴィンチの Vitruvian Man は「建築十書」に書かれている「両腕を広げた時の長さは背丈に等しい」という記述に着想を得て描かれたものです。