5. 建築のエッセンス

改めて思い出したい【逆パース論】

「建築」や「文学」が消えた今、あえて思い出す。 柄谷行人「日本近代文学の起源」 風景の発見、 内面の発見、 告白という制度、 病という意味、、、 漱石の文学論fの構造 正岡子規の俳句、短歌の滅亡予想 「ジャンル」の消滅 磯崎新《建築》と”逸脱” 「貴…

大文字の建築は消えた

デミウルゴスとして「建築家」が輝くステージを博覧強記な才能を駆使して自らつくり上げていた磯崎新。そして実作はどれもが堂々たる「大文字としての建築」だ。廃墟から出発した根源的で野生味溢れる想像力と、何者をも恐れない冷静で激烈な行動力が相まっ…

フランスの建築家ジャン・プル―ヴェ Jean Prouve という人

Jean Prouve 1901-1984 ジャン・プル―ヴェ フランスのナンシーを拠点に活動。ポンピドゥーセンターの設計競技で審査委員長を務める。家具の延長上で、建築をプレハブによって効率よく美しく作り出す天才だった。父は工芸家・画家、母はピアニスト。エミール…

アルヴァ・アアルト最後の住宅 ヨーラン・シュルツ邸

Villa Schildt (Villa Skeppet) , Tammisaari, Finland, 1970 書斎のヨーラン・シュルツ

今改めて確認すべき「日本的なもの」2/10

「日本的なもの」は、外国人の目で日本を見たときに初めて浮き上がってくる概念である。 倭国が「日本」になる西暦600年代、大陸の大帝国「唐」や朝鮮半島の「高句麗」「新羅」といった外国勢力と死に物狂いの戦争を行い、都を定め、法律を整え、仏教を定着…

今改めて確認すべき「日本的なもの」1/10

今、世界中が非常事態にある。きっかけはウイルスだったが、この事態の中で注目すべき点は世界中の市民・国民に植え付けられた恐怖心だ。そして「共通の敵に対して、市民・国民が共に力を合わせて立ち向かわなくてはならない」というモノトーンの息苦しい空…

地のつく言葉を幾つか挙げてみると、どれも建築に深いつながりがあることが分かります。地面、地形、地勢そして地球。地面は建物がたつところ、地形はまちや都市が広がっているところ。地勢は山や川のあり方です。あえて対応させるとこんな感じでしょうか。…

構造

構造は技術的な面を担っています。建物の骨組と材料を決定すること。それをどうやって組み立て、施工するか。工事の安全や期限に見通しをつけること。こうした現実的な作業が構造の仕事です。建物を実現するには構造家の協力が不可欠です。建物のボディーを…

壁の働きは流動を止めること、自由を限定することです。設計段階を考えてみると、壁の位置と高さを決めることで、アイディアの多様な可能性は限定されてゆきます。そして、部屋の配置が決まり、ヴォリュームが与えられ、機能が定義されるわけです。壁は人間…

テクノロジーと大自然

「大自然」は建築の外部に想定した非対称の観念です。人間がコントロールできないものです。一見矛盾しますが、テクノロジーが「大自然」を生み出すことがないでしょうか。テクノロジーは建築の主要な要素ですから、「大自然」を生むとなれば、建築は内側に…

本当の外

外には未開の荒野が広がっています。そこは人の住まない所、行かない場所です。一方、内には安全なスペースが確保されていて、そこには家族や友人が暮らしています。「外と内」の世界観を単純に記述するとこんな感じでしょうか。建物を対象にしても、都市を…

様式の真理

建築の真理は古代ローマにありました。古代ローマの建築を理想とする古典主義の時代が18世紀まで続きます。この間、真理に対する現在進行形の探求が続けられました。古代ローマの「真理」はつねに傍らにあり、自分の創作活動はそれに基ずく行為であって、古…

エネルギーの塊

建築物はエネルギーの塊です。ものは燃えることで熱や光、煙を出しますが、これは燃焼エネルギーを持っているからです。建物が火事になると巨大なエネルギーが放出されます。 それからもう一点、位置エネルギーです。地面に置いてある一枚の瓦が屋根に載せら…

垂直線

垂直線は重力の働く方向を示します。位置エネルギーは上へ行くほど大きくなりますから、垂直線は建物の部材がもつ位置エネルギーの大きさを表す数直線となります。同じ重さの部材でも、地面にあるのと、屋根の上にあるのでは位置エネルギーが大きく違います…

未来に向かう意識

建築様式は近代に入って過去を参照することをやめてしまいました。1つの理由として、テクノロジーの飛躍的な発達によって社会全体が未来指向になったことがあります。人々の関心はこれから可能になるであろう未来の生活に向けられるようになりました。過去に…

建築様式の時代性

様式の明確な定義は、ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロックという段階的な展開が終わってから行われました。1つ重要な点として、様式は次の様式が出て来ても消滅しないでそのまま生き残っていることです。主流の座は譲り渡しても、あいかわらず現役で…

様式の起源

様式の起源は18世紀にあります。その契機は古代遺跡の発掘が進み、それらを調査、測量する作業が進んだことです。その結果、古代建築物の詳細が具体的に分かってきたんですね。ローマ様式、ギリシア様式のような明確な整理分類はこうした流れの中で行われま…

建築を考えるとき「人間」を引き合いに出しますが、このとき想定しているのは実は「命」ですね。人間には顔や性格という個性がありますが、全てのベースは命です。冷たく固い建物に対して、暖かくて柔らかいのは人間の命だと思います。古代の遺跡を見学した…

最初の意志

まちや集落も最初の礎(いしずえ)は人間の意志によって築かれるものです。世界の集落調査や都市の研究によって、核になる建物の位置や主要な道のルートなどは多くの場合、誰かが意図的に決定していることが明らかになっています。まちや集落は、建築と違い…

時の経過

「時の経過」は人間に害をなすものです。地震や強風と同じです。そして建物は時の経過から人間を守ってくれます。10年15年という時の経過に対して自分が守られているという印象はあまり持たないかもしれません。しかし、建物がいつでもどんな時でも必ず同じ…

自然と大自然

自然に対しては人工という言葉がカウンターパートですが、大自然については対になる言葉も概念も見当たりません。自然は人間が創ったものではないにしても、人間が理解でき把握できるものです。大自然は空間的にも時間的にもヒューマンスケールを超えたもの…

図面と模型

建物は構成要素の巨大な集合体です。部分が無数に集合して1つの全体を形成しています。すべての部分はそれぞれの働きをもって全体と結びついています。建物をつくる際、設計図面や模型を利用しますが、ここには代表的な部分についての情報しか表現しないの…

睡眠

人間は1日24時間の1/3を睡眠にあてています。つまり人生の1/3は寝床で寝ているわけです。このことから、人間に最も大切なのは睡眠だろうと考えられます。 一方、現代人の生活パターンを考えたとき寝る場所だけはどうしても自分専用のスペースが必要…

構築と重力

構築の背後には重力があります。構築とは、重力の支配下で部分部分を積み上げて1つの全体を築き上げることです。下から上へ順番につくってゆくのです。 construction and gravityTo construct a structure goes under domination of gravity. It starts at …

部分と全体

部分と全体の関係は視点の取り方で変わるものです。人間サイズにおいては建物の壁や屋根が「部分」であり、それらが集まって1つの建築物ができている。これが「全体」です。都市サイズになると1つの建築物が「部分」であり、それらが集まってまちができて…

建物の住所表示とパブリックの意識

建物の住居表示は日本と欧米で異なります。番地のつけ方に注目すると一つ興味深い点に気づきます。日本では丸の内、大手などブロックに名前をつけますが、欧米ではベ−カーストリート、アイビーロードなど、まず道に名前をつける点です。ここに人々のパブリッ…

開口部

開口部は壁や床にあけられた孔です。興味深いことに、建築物を構成するさまざまな部分の中で日常的に動かして使うのは扉と窓ですが、どちらも開口部に取り付けられるものです。基本的に動かない建物の中で、唯一動く部分が開口部と関係しているわけですね。…

建物の重さ

コンクリート造の建物は石のかたまり。木造、鉄骨造の建物は骨と皮。建物の重さを考える時、まずこんなイメージを持つとよいでしょう。建物の重さは、地震力や風圧力を検討するときに重要なファクターになってきます。 さて、直感的に建物は重いほど強いよう…

湿度こそ決定的

アジア人のウエットな性格と白人のドライな性格の違いは湿度が原因です。アジアの風土とヨーロッパの風土がそこに住む人間に反映したのです。当然、アジアは欧米にくらべて湿度が高いですね。ウエットです。この違いは両者のさまざまな面に影響を与えていま…

スペースをわける床と壁

版=スラブとして床と壁はスペースを仕切ります。壁は仕切るのが使命ですが、時として象徴的な意味を帯びる場合がありますね。「壁をつくる」というような場合、壁は実体がないスペースも仕切ることを意味しています。心理的な壁ですね。また「ベルリンの壁…