67/75 未来に向かう意識

ken1062006-12-11

古典建築のお手本は過去にありました。ギリシアやローマで古代につくられた建築に真理を見い出していたのですね。一方、現代建築は未来に理想を求めているように思います。例えば我々はよく「計画」という言葉を使います。建築計画、基本計画、都市計画など、ここに共通して存在する意識は現状と過去を否定し、未来を理想としています。
このように古典建築と現代建築は創作上の意識が正反対です。建築が古典を離れ近代化し、やがて現代建築となっていったここ200年くらいの出来事の中に、過去と絶交した大転換の時期があったのです。各分野で「古典=クラシック』は消えていきました。20世紀初頭の頃です。この絵はそうした運動を象徴する一枚です。
これはマレービッチ Kasimir Malevich の「白の上の白」white on white 1918 です。もうこれ以上削ぎ落とすものはない。徹底的に何も描写しない。こうした作者の強い意志は過去との断絶を意味しています。長い絵画の歴史を全否定しようとするものです。アヴァンギャルド運動の神髄ですね。したがって、この白一色の正方形の背後には、重く固い「古典」が息苦しく横たわっていたのです。