エネルギーの塊 2004.12.13

NY9.11

21世紀はテクノロジーの否定から始まった。
2001年9月11日、ニューヨークで起きたワールド・トレードセンタービルへのテロ攻撃は20世紀に人類が獲得した英知とその産物が一瞬にして「否定」されたことを示しています。もっとも、この出来事が宗教間の報復合戦の一つであったことは事実ですし、怒りと悲しみに満ちたトラウマになったことは痛い現実です。したがって、これが表面的で一方的視点でしかないことをふれておきます。
ワールド・トレードセンターは2棟からなる超高層ビルで、経済効率を徹底して追求した20世紀究極の建築物でした。建物の構造も無駄を排除した合理的発想で考えられていました。床を支える柱は一本もなく、中央のEVコアと周囲の外壁で全ての床を支えるシステムでした。つまり110枚の床版が400m以上の高さまでこのシステムで積み上げられていたわけです。このことが、建物上部に想定外の荷重が載った時、ドミノ倒しのような現象を起こして建物全体がいっきに崩落してしまう要因になったのです。
ところで建築物は物理的に見るとエネルギーの塊です。ものは燃焼して熱に変化するエネルギーをもっているからです。さらに地面から重力に抗して持ち上げられた物体は位置エネルギーをもちますね。したがって静かに立っている建物は、実はエネルギーの塊なのです。外部から何らかの働きかけを受けると、それを契機として巨大なエネルギーを放出する潜在エネルギーを秘めているのですね。
こうした観点でジャンボジェット機を考えてみると、こちらはもっと明瞭にエネルギーの塊であることが分かります。燃えやすい燃料を積み、非常に大きな運動エネルギーをもって飛行しているのです。これが、超巨大な2つのビルと衝突した。
ニューヨークのあの日の衝突が意味することは、やはり「テクノロジーの否定」です。超高層ビルとジャンボジェット機という20世紀テクノロジーにおける最高の産物が、お互いを打ち消し合い、多くの人命とともに、一瞬にして消滅したのです。