ジョン・ソーン

soane

ジョン・ソーン 
Sir John Soane (1753-1837)

ソーンは英国の建築家です。代表作はロンドンのイングランド銀行やダリッジ美術館などです。実務的な建築家としておおいに成功した人物で、英国を代表する建築家の一人ですね。

ソーンは「時間」の建築家です。彼が集めたアンティークの膨大なコレクションやガンジーに描かせたドローイングからその事実を読み取ることができるでしょう。

コレクションの方は、古代遺跡から拾ってきた建物の一部や彫刻、家具など多岐にわたる内容で、ソーンの建築家ごころを刺激したであろうものから成り立っています。手元に置いて、デザインの刺激を得ていたのかも知れません。古いものに対する特別な思い入れが伺える品々ばかりですね。アンティークに刻まれている「時間」をソーンは見ていた。そんなふうに考えていいでしょう。

それから、ドローイング。彼は自分の設計した建築の完成した姿を水彩のドローイングで描かせています。ソーンにはドラフトマンとして頼りにしていたガンジーという絵かきさんがいました。数多くあるドローイングの中で2枚のユニークな作品があります。

1つは大きな室内に自分が設計し、実現した建築のミニチュアを一堂に集めた作品。もう1つは実現しなかった建築が小高い丘を背景として屋外に集められた作品。どちらも自分の作品がところ狭しと並べられています。

これらはソーン自身の記念アルバムです。敷地と切り離され、架空の場所に置かれているのは、現実的な諸制約に縛られず理想的な姿で存在することを望んだからでしょう。絵の中で永遠に自分の作品が生き続けることを祈っていたかも知れませんね。

ソーンが生きた時代は建築の様式が生のインパクトを失い、マニュアル化した時代です。「新古典主義」と言われる時代ですね。重々しい建築様式は時代の制約から開放されてマニュアルの中に並べられた訳です。そういう意味では「過去と未来は自由に行き来ができる」感覚が生まれていたとも考えられますね。

ソーンもこうした感性をもつ建築家でした。

そんな訳で、この2枚のドローイングには、いわば複数の「時間」が流れている。生涯に手がけた幾つもの建築作品が生きる「時間」の数だけそこには存在するのですね。

ソーンが「時間」の建築家だと考えられる所以です。