09 核エネルギー

きのこ雲

引用

膨大な工業力で精製されたウラニウム235またはプルトニウム239がある大きさ、臨界容積以上に集められると、内部で発生した中性子は外に散逸する前に他の核に衝突し、自然連鎖反応を誘発する。1回の衝突で2個の中性子と2x10の8乗 電子ボルトの核分裂エネルギーを発生するものとすると、1kg のウラニウムまたはプルトニウムの核の全てが分裂するには90段階の連鎖で完結し、発生するエネルギーは2x10の10乗 キロカロリーとなる。これは1日の出力にして100万キロワット、3ニトロトルエンTNT火薬)2万トンの爆発力に相当する。その約30倍(30kg)程度のものが広島、長崎で投下されたと想像されている。核の数の 1/10 程度が爆発時までの核分裂にたずさわるとして、前記の3倍のエネルギーが瞬時に発生する。その閃光は太陽のそれよりも遥かに強く、1000万度の高熱を発してすべてのものを焼き尽くし、分裂生成物も未作用のウラニウムも超高圧の気体となる。その爆発力は100万kg/平方センチと言われ、キノコ雲の高さは12kmの高空に昇った。8月6日広島、被災24.5万人、死者7.8万人。8月9日長崎、被災26万人、死者3.5万人。このための米国の戦費は20億ドルと言われている。おそらく科学者は新エネルギー時代の幕開をこのような悲劇で始めたくなかっただろう。1945年のことである。

木村俊彦「構造設計とは」鹿島出版会より