45 茶器の小宇宙

長次郎の黒楽

長次郎は利休の詫び茶には欠かせない茶碗をつくりました。点前のときの使いやすさに色々工夫があるようですが、それ以上に芸術品として強い存在感をもっています。それはウエッジウッドの食器などと較べれば考えるきっかけをつかみやすいかも知れません。利休の時代、キリスト教の宣教師が本国へ送ったレポートに「日本人は土で焼いたみすぼらしいカップを宝にしている」というような記述があります。部分と全体の調和ではなく、ただ一つのものをじっくり眺め、その中に美しさを見ることができるのは日本的感性ですね。茶碗にできた傷やひびさえ「景色」として愛でることができるのはその証拠です。

黒楽茶碗「面影」 by 初代 長次郎 桃山時代