未来に向かう意識 2004.12.11

Malevich

カジミール・マレービッチの作品です。これは1915年に開催された展覧会の様子です。ご存知のようにマレービッチはロシア・アバンギャルドの作家ですね。

ここで注目すべきは、彼の絵にはフレーム=枠がないということです。

この事によって、幾何学的な図形が1枚の絵から解放され、浮遊し始める。壁面へ、展示空間へ。いくつもの幾何学的な図形が限定なしの流動空間を浮遊するようなイメージですね。

これは1枚1枚の絵画を独立させていたフレーム=枠をとりはらったことによる画期的な効果と考えられます。別の見方をすれば、1枚の絵に描かれた図形が他の絵の図形と呼応して、空間全体がマレービッチの世界になっているとも言えるでしょう。

建築の分野でこれと同様のアイディアをさがすと、ミ−スのユニバーサルスペースを挙げる事ができるでしょう。それは無限定空間とも呼ばれ、近代建築最強のアイディアかも知れません。間仕切り壁を取り払った流動する空間。壁や柱の抽象化。

ところで、建築物の一部でしかなかった絵画の存在を、建築から独立させ、絵画という1つのジャンルが成立できた、その最も重要なきっかけが、絵にフレーム=枠を付けることだったというのは、注目しておきたいポイントです。

それまでは天井や壁に描かれて建築物と運命を共にするのが絵画の宿命でした。しかし建物から分節され、1つの作品として独立できたのはフレーム=枠で絵を建物から切り取ったからですね。

この観点でマレービッチの絵を見ると、絵画に不可欠なはずのフレーム=枠を取り払ってしまったことの大胆さが分かるかと思います。彼がアバンギャルドの作家と言われる所以です。

そのアバンギャルドというのは20世紀はじめ、ヨーロッパの各都市で起こった「伝統否定運動」ですね。第一次世界大戦ロシア革命といった、社会体制が帝政から民主主義へと大転換した時代の芸術運動です。古典から近代へ。民衆の、そしてアーティストの意識は過去から未来へ大きく転換していったのです。