アスプルンド

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アスプルンド 
Eric Gunnar Asplund (1885-1940)

アスプルンドスウェーデンの建築家です。近代建築の前衛運動を北欧の地スウェーデンで実践した人物です。アアルトやヤコブセンなど後続の北欧建築家に影響を与えたパイオニアです。

アスプルンドはストックホル厶の王立工科大学で建築を学び、卒業後に友人と応募した墓地のコンペを勝ち取って有名になります。この青年時代の仕事は「森の墓地」として彼のライフワークになりました。

彼は40歳なかばでストックホル厶博覧会のパビリオンをデザインして建築家として一つの転機を迎えます。北欧では初となる鉄とガラスの近代建築をそこで大々的に実現したのです。同じ頃、大学教授に就任しました。

彼はヨーロッパの中央で展開する刺激的な近代化運動からは少し距離をとりながらも、時代の趨勢を見極める努力をおしまない建築家でした。スウェーデンの地を離れることなく、自国における近代建築のあり方を考えたのですね。

アスプルンドは古典建築の安定感と近代建築の新進性を臨機応変にデザインし分けることができる柔軟な思考の持ち主でした。ストックホルムの図書館と万博のパビリオンが同じ建築家の手によるデザインだということに驚きます。

アスプルンドの建築はどれも理にかなった本物です。「建築」の本質に響くエッセンスが存在しているように感じますね。

しかし、一方で彼の作品には「アスプルンド」らしい共通するデザイン言語が見つけにくいのも事実です。彼はプロジェクトごとに、最もふさわしい解法を導きだすことに専念したのでしょう。過去の成功経験に頼らず、同じデザインをくり返さないポリシーがあったのかもしれませんね。

アスプルンドは20世紀前半の激動の時代を生きた建築家です。世の中には近代化の波が押しよせていた訳ですから、彼の活動が建築の近代化運動を抜きにありえなかったこと、作品もその影響下にあったことは真実です。

そうしたことをふまえた上で彼の作品を見ると、北欧の近代建築を代表するだけにとどまらない、一つ一つが見るべき良質な建物として色褪せない強さを持っていることに気がつきます。ここにアスプルンド建築の美点があるのですね。

残念なことにアスプルンドは55歳の若さで亡くなりました。