オットー・ワグナー

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オットー・ワーグナー 
Otto Wagner (1841-1918)

ワーグナーはウィーンの建築家です。多くの実作があり、その中にはウィーンの顔となった建物がいくつも存在しています。後年、大学教授に転身し、将来近代運動を担うことになる有能な弟子たちを育てました。

ワーグナーは都会派です。郊外の田園に住むことを主張するグループとは対立していたんですね。彼は20世紀にふさわしい人間の住むべき場所について深い関心があり、それは都市であると考えていました。

そんな彼ですからウィーンの交通整備や都市計画の策定に参画しています。

ワーグナーの建築家としての素養は古典的なものです。しかし彼は独創性に富み、時代の変化にも敏感でした。古典建築にわだかまる伝統や威厳という重いイメージを払拭するような斬新なデザインを考え実践したのです。ウィーンという歴史と伝統がいろ濃く残る場所でそれが成されたことは注目に値します。

彼は古典建築の「装飾」を拒否したわけではありません。自分なりの解釈を加え意識的にデザインしたのですね。彼の「装飾」は軽やかで色彩豊かです。場合によってはグラフィック的といえるくらい自由なものも存在します。

これを「近代建築」の目から見ると、建築の歴史を変えたある大きなポイントが指摘できます。簡単に言えば、それは建築物に軽さがもたらされたこと。建物の中にヴォリューム感が生まれたこと。その結果、全体としてひとかたまりの操作対象として捉えることができるようになったこと。こんなふうに言えるでしょう。

ここで一つ、ワーグナーの「装飾」と「近代建築」の萌芽をつなぐキーワードをあげておきましょう。それは「平滑化」です。

ワーグナーが古典建築の装飾を薄くし、貼ったり縁取ったりできる軽い存在として扱ったことは、建物の外観がスリムになり外壁が平らになる効果を生んでいます。この現象が建築の「平滑化」です。彼のグラフィックな装飾デザインは「平滑化」の一歩でした。

「近代建築」の成立過程で、それはやがて外壁自体の変化となり、外壁が建物の薄い表面にまでなる段階に至ります。そして今のところ平滑化の究極の姿はガラスのカーテンウォールでしょうか。

いわば外壁の「平滑化」が古典建築を近代化したのです。