58 ダンス空間

forsythe

dance performance by
William Forsythe, choreographers
ウィリアム・フォーサイス 振付け師
ダンス空間というものを考えてみます。それはトレーニングを積んだダンサー達が床の上で全身を使って動き回ったときに成立するものです。舞台装置やセットは二次的な要素だとすれば、固定した建築空間の対極にあると考えられます。ダンス空間は生身の人間が媒介して成立するものですね。ところでフォーサイスが監督するダンスパフォーマンスは人間の運動能力を最大限まで活用したテンションの高いものとして建築の分野でも注目されています。複数のダンサーのからだの部位が複雑に絡み合いながら流動する。ダンサーAの右腕とダンサーBの左脚、ダンサーCの頭とダンサーAの左肩。鍛え上げられた身体を駆使して、これらの部位を関係づけながら一つの流れをつくってゆく。こうしてフォーサイスのダンスパフォーマンスは感動的な空間を演出するのです。建築の側からこれにどんな解釈ができるのでしょうか。さらにダンス空間を如何にしたら建築空間に回収することができるのでしょうか。こうした問いかけが実は建築の価値をおとしめることかもしれないとしても、関心を持たざるを得ない何か強い磁力があるようです。
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