動かない 2/75

ken1062006-10-07

カナレットが描いた1700年代のベネチアです。サン・マルコ広場ドゥカーレ宮殿が見えています。現在とほぼ同じですね。建築が「動かない」ことを示すために取り上げました。当たり前すぎるこの事実を、あえて考えてみましょう。
我々は日々の生活で、知っている建物がいつでも、どんな時でも、その場所にあるのは自明であり、疑いもない事実として受け入れています。存在を意識することもあまりないですね。しかし、ある日突然、それがなくなってしまうと我々は非常に驚きます。それはなぜでしょうか?
ところで、建物を設計するとき、方位は初期条件の中で一番重要です。東はどちらか。敷地の南には何があるのか? 方位は最初にチェックすべき重要ポイントです。そして方位は太陽の位置を示します。方位のチェックは太陽の運行を確認するための欠かせない作業です。このとき、建築は「動かない」、太陽は刻々と位置を変える。この対比をどれだけ深く検討したかが、完成した建築の善し悪しを左右する鍵になるでしょう。
「動かない」建築は背景です。建築を訪れる様々なものの背景となって、活動を支えます。人間ばかりでなく、鳥や昆虫も、建物の訪問者は建築が「動かない」おかげで安らぎを得ることができるのです。