62/75 Instant City

ken1062007-03-29

ア−キグラム archigram のピーター・クックによる「インスタント・シティー」Instant City です。映画やショッピングセンターの宣伝看板、ネオンサインなど、都会に多く見られる「イコン」を使って、地方のさびれた田舎町を活性化するというプロジェクトです。
「インスタント・シティー」は幾つものバージョンが存在するシリーズものです。ここでピーター・クックの提案したシティー=都市は、徹底して表層的な存在であることがポイントですね。このイラストでは、都会の「イコン」「エンターテイメント装置」を飛行船で移動させ、田舎町に貼付ける様子が描き出されています。
基本的な筋書きはこうです。都会の「イコン」を貼付けた「シティー」がやって来て、イベントを展開する。その様子をテレビ中継で全国に放映し、まちを有名にする。同じように、幾つもの田舎町を有名にし、それらをつないでネットワークを形成する。その結果、多くの人々が集まり、相互に移動するだろう。やがて、このネットワークは華やかな「メトロポリス」として新しい姿を現すだろう。
「インスタント・シティー」はア−キグラムが取り組んだ仕事の中では現実味をもったプロジェクトです。財団の補助金を受けて多くのスタディーがなされ、1970年には最優秀に選ばれ実施に移されるところまでいきました。モンテカルロにエンターテーメント施設をつくるコンペでのことです。
このアイディアが最初に考えられたのは1968年です。彼らは当時、大資本や権力とは無縁なポップ集団でしたから、都市は面白おかしく楽しむべき対象だったのでしょう。それにしても、ア−キグラムの都市に対する態度は、非常に皮肉で批判的ですね。
彼らのように都市を記号論的に考える試みは当時の流行でした。背後では都市計画の不可能性が叫ばれていたんですね。「現代社会において、都市は人間がコントロールできない怪物だ。我々にできることは表層的な記号の戯れしかない。」ベンチューリのアイディアもここから発していたと考えられます。