61/75 睡眠工場

ken1062007-03-28

メルニコフ Melnikov の睡眠工場です。「睡眠を生産する工場」がコンセプトです。建物が少し傾けてあるのは横になったとき枕がいらないようにです。
睡眠工場は1929年に行われた「緑のモスクワ計画」というコンペの応募案です。このコンペはソ連政府が立案した「市民の保養所をモスクワ郊外の森林地帯につくる」というプロジェクトを実現するために行われました。
メルニコフは応募案のテーマを「睡眠によってソヴィエト的人間を生産すること」としています。「睡眠を通して人間に治療を施し、その性格を変える」「人間のフォルムを変える」という言葉が彼の説明文に見られます。こうした主旨にもとづき集団睡眠室がデザインされたのですね。幾つかある建物の中心に睡眠工場が配置されています。
人間は工場で生産される製品であり、温度、湿度、気圧、音響、香り、振動などによって品質管理される。建物自体が傾けてデザインされたのは、「睡眠を生産する工場」のコンセプトを徹底して表現しようとするメルニコフの本気さの現れと考えていいでしょう。
「緑のモスクワ計画」は保養所ではありましたが、規模の大きさからいって、郊外における「まち=都市」の新たな在り方が求められました。それに対してメルニコフは「睡眠」を軸にして建築と都市の関係を組み立て答をつかむ手がかりとしたのです。