60/75 道と広場と住居表示

ken1062007-03-27

AtoZ という英国で一番普及している地図です。ロンドン中心部であるにもかかわらず、見ての通り、道と広場しか書いてありません。しかしこれで十分実用的なのです。実際これを使ってロンドンを歩いてみると、どんな場所でもスムースに行くことができるでしょう。その理由を一言でいえば、まちが道と広場でできているからです。
一般的に西洋では道と広場はパブリックスペースの代表であり、通常この2つがまちの骨格を形成していますね。住民の意識も、道と広場は公共の場所であるという感覚がちゃんと定着しています。
AtoZの国、英国でも同様です。そして、道と広場には誰もが見やすいような住居表示がしっかりなされているのですね。まちを歩いている時、道や広場の名前を書いたプレートを一度も見ないことはありません。見やすいポイントにちゃんと取り付けられています。
という訳で、AtoZが実用的なのは、道と広場がまちのベースになっているからだと考えていいでしょう。
さて、話は変わりますが、ロンドンの道にはいくつもの種類があります。大きい順に、ストリート、ロード、テラス、ガーデンズ、ミューズなどですね。また広場には、スクエア、サーカス、クレセントなどがあります。こうした名称は、形状や位置に応じてつけられています。例えば表通りの四角い広場はスクエア、裏通りの丸い広場はクレセントという感じですね。
それからリ−ジェント・ストリートやラッセル・スクエアなど個人の名前が冠された道や広場も多く存在します。それらは通常、その地域の所有者だった貴族や地主の姓名か、あるいは彼らの故郷の地名です。稀にその地域の開発に尽力した人物の名前であることもあるようです。
このように多くの道に個人の名前が冠されているのには理由があります。それはロンドンが地域ごと、ばらばらに開発されていったからです。パリのようにまちを貫く軸線となるような道が存在しないのです。ロンドンには地域ごとに古くから大地主がいて、彼らは自分の土地をそれぞれ独自のやり方で開発していきました。国王や女王も、ここでは地主の一人に過ぎませんでした。ロンドンのまちをいろいろ歩いてみると、それぞれの地区ごとで表情が随分ちがうことに気がつくでしょう。