33/75 祭り

ken1062007-02-13

建築には「祭り」の要素があります。この絵は昔の普請場のようすを描いたものですが、活気溢れる普請場はまるで「祭り」をやっているようですね。人間の手で大きな作業をするには「はれ」の空間演出が効果的。「祭り」には人間のパワーを最大限に引き出す力があるようです。
大規模な土木工事をまだ人力で行っていた頃、「祭り」の力をうまく利用したのが織田信長です。二条城の築庭工事で名石「藤戸石」を敷地内に運び込むときのエピソードはよく知られていますね。石を綾錦(あやにしき)で包み、花で飾り立て、大綱をかけた上で、笛、太鼓、鼓ではやし立て、信長自らが陣頭指揮をして運搬しました。町中を通るとき、すごい数の民衆が見物に来たといいます。まるで京の「祭り」ですね。同様の演出は安土城の石垣工事でも行われています。
一方で、「祭り」のもつ破壊の要素から、建築の裏側に潜むネガティブな面を照射することもできるでしょう。一般に創造と破壊は同じ概念の裏表です。全国の有名な祭りで、ものが破壊されたり、けが人や死者がでる例には事欠きません。「祭り」に関しては社会も寛大です。
建物が作られるにしても、壊されるにしても、現場の興奮は「祭り」的ですね。