一期一会の建物つくり 2004.10.27

ポンピドーセンター初期模型

この写真はポンピド−センターの建設前につくられたコンセプト模型です。我々が知っている外見とはだいぶ違っていますね。この模型で示されているコンセプトとして重要なのは、展示室や収蔵庫がコンテナの中に収められていること、巨大な2枚のスクリーン壁によってそれらをサンドイッチしていること、こうしてできたサンドイッチ構造が建物全体の構成となっていること、エレベーターとエスカレーターのアクセス方法が視覚的に明快であること、建物前に大きな広場を設けたこと。などなどです。
これらの提案はきわめて大胆で原理的だといっていいでしょう。現代美術を対象とするミュージアムのあり方を徹底して追求したことが推測されますね。それは模型の色使いが赤青黄の3原色に限られていることからも裏付けられます。
現代アートの美術館とは一体どんなものか?模型から受ける印象は仮設建築です。例えば、評価がまだ確定しない現代美術の作品を受け入れる施設なので、建築的なしつらえはできるかぎり柔軟であるべきだろう。イベント性の強い作品やパフォーマンスをいかに展示、保存するか。というような課題が挙ってきます。未来の美術館はいつまでも完成しない実験工場のようなものかもしれない、、、。既存の美術館があまり参考にならなかったことが推測されます。
そして、この困難で刺激的なプロジェクトは世界中からアイディアを募集することで実現に向けて動き出したのです。国際的な設計コンペが行われ、多くの応募案が寄せられました。その結果選ばれたのが建築家ピアノ+ロジャースの提案だったのです。それが、この写真の模型です。
案を選んだのは審査員だったプルーヴェ。施主はフランス政府。ポンピド−センターはこれらの人たちをはじめ、工事に関わったさまざまな専門家や職人たち、その他多くの関係者が参加した超巨大プロジェクトでした。
パリのポンピド−センターは過激な提案がみごと実現のチャンスを獲得し、前代未聞の建物つくりが行われた事例であり、世界的な一期一会です。