動かない 2004.10.07

Leonidov

ロシアの建築家イワン・レオニドフが描いたドローイングです。建物が地面から浮きあがり、重力から解放されたかのようです。建築は「動かない」ものですが、軽さや浮遊感は憧れのイメージです。レオニドフのドローイングにはしばしば飛行船や飛行機が登場します。当時それらは空を飛ぶハイテク機械として新時代を象徴するテクノロジーでした。建築物の背後で飛行船や飛行機が空を飛ぶようすは彼のドローイングの特徴です。建物が敷地の制約や重力から解放され、浮遊するようなイメージは「動かない」建築にとって最も刺激的なものです。建築家がこうした夢想を実際の絵に表現できたのは、当時の社会背景が原因です。それはロシア革命によるものでした。重い伝統からの開放感がロシア・アバンギャルドの原動力でした。
さて、このレオニドフのドローイングについて説明しておきましょう。これは実は1957年に行われた国連本部のコンペ案です。敷地はインド洋の島に設定されています。なぜインドかと言えば、レオニドフはインドの和平に関心をもっていたからです。インドは国内に多くの民族がおり、政治的に大きな問題を抱えています。レオニドフは、民族それぞれがアイデンティティーを保ちつつ、うまく調和し共存するべきだと考えていたようです。そこで、国連本部をさまざまな国の独自性が共存するシンボルととらえ、これをインド近くに計画することで、民族共存の可能性を強調する意図を持っていました。ここで「太陽の都市」というコンセプトを提案しています。