29/75 ピクチュアレスク

ken1062007-02-02

「ピクチュアレスク」という言葉は1720年頃、詩人のアレグザンダー・ポープと建築家のジョン・バンブラが考えたとされています。
絵に描かれた風景のように庭をデザインする「ピクチュアレスク」庭園は、池に架かった橋や水車小屋を如何に見せるか。あるいは実際に歩いたときの見え方、景色の展開などに注意が払われますね。幾何学式庭園とは対照的です。
「建築」はこのピクチュアレスク庭園に対してちょっと特別な「恨み」があります。それは「建築」の価値をおとしめ、芸術としての地位を下げた犯人がピクチュアレスク庭園だったからです。
18世紀末、世の中の近代化が始まった頃、「建築」はバロックロココに続く新しい様式を生み出せないでいました。そんな中、建築は風景の一部、あるいは単なる舞台装置のような役割をピクチュアレスク庭園で担わされるようになったのです。このことが一般的な「建築」の概念にまで波及し、その文化的地位が落ちるという結果を招いたんですね。
ところで、このピクチュアレスク庭園は幾何学をベースにデザインするのではなく、その土地の歴史的、地理的、文学的な文脈を読み取り、それに基づいて組み立てた物語をベースにデザインするのが特徴です。したがって、デザイン根拠を土地の個性に求める訳です。「ピクチュアレスク」という言葉がポープのような詩人によって命名されたのは、こうした文学的な作業があったからでした。