空間とは

建築の空間には2種類あります。1つは計量できる空間。もう1つは人間の五感と身体全体で知覚する空間。空間の定義はきわめて多様でさまざまな見方があると思いますが、このようにちょっと単純に考えてみた方が明快な視点が持てると思っています。
さて、前者の空間は建物の中にある「すきま」です。空調計画の換気計算で用いるような数字として表現できる三次元の広がりですね。そして建築をおもしろくするのは後者の人間が知覚する空間ですね。この空間は壁や天井に囲われている必要はありません。そして心を動かしてくれるものです。その空間は多くの場合移ろいやすく、また非常にたくさんのパターンが存在します。例えばあるスペースに一束の光りが差すことで、崇高性を感じるようなすばらしい空間が現われる。また好きな音楽が流れてくることで、とても心地よい気分を味わえる空間が現われる。あるいは好きな人が近くにいるという理由で、忘れがたい思い出の空間が現われた。このように挙げればきりがないほどたくさん存在し、心を動かす空間と考えることができると思います。
従って、後者の空間は数量化したり場合分けするのが難しいものです。一般に名作と言われる建物には心を動かす空間があるものですが、それは壁の構成方法や素材の使い方、各部分相互のプロポーション、色使いなどによって生み出されているものです。しかし、こういう建築的な手法によらないでも、前述したように感動空間が生まれることが建築のおもしろさであり難しさなんですね。建築の奥深さは、後者の空間がもつ多様性を知ることでますます深まってゆくでしょう。
実際、建物は訪れてその空間の中に入り身体全体で雰囲気を感じとってはじめて良さが理解できるものです。建築の醍醐味は実際に建物を訪れてみないと、あるいはつくってみないと、どんな空間が立ちあらわれるかわからない。この点にあるのだと思います。

space

Space is an event in architecture. Not only a void in the building. People can take a nice time in space. It is one of the most important notion in the architectural field. Masterpieces of Michelangelo or Palladio really have fine spaces off course. However even ordinary building can have a space by means of several factors. It's not possible to pick up all actual factors but possible to find out eventual reasons according to the state of affairs. A space tend to emerge when eventual things in changable condition get together and hit each other to creat specific scene. Natural light, favorite music, with sweetheart, love of family, humidity, color, reflection of light, sad happening and so on. These factors can make mere volume nice space. Therefore no one can predict what kind of space will appear at the moment. We have to visit the architecture by ourselves actually to meet a space.