飛翔する時間 2004.10.15

待庵にじりぐち

千利休の茶室、国宝「待庵」のにじり口です。「待庵」は極小の名建築。床面積4帖半の茶室ですね。現在もオリジナルのまま京都の妙喜庵に現存しています。

床面積が4帖半と言いましたが、客をもてなすスペースはさらに小さく2帖半しかありません。畳が2帖、床の間0.5帖。お花と額を飾る床の間はちゃんと付いています。

そして、主人のスペースである次の間と勝手は、ふすまで仕切られてとなりに配置。大きさはそれぞれ1帖ずつです。客間は、天井の一部が折上げ。壁には窓が2つ孔けられています。しかし意外なことに、にじり口は他の茶室より少し大きめです。

さて、この2帖半の極小スペースで客と主人はどんなふうに振る舞ったのでしょうか。心と体のぎりぎりの激突があったことでしょう。相手の体臭までとどいてしまいそうですから、親近感が湧くと同時に、自分の素が出てしまう。顔の表情の変化も隠せない。人物を見定める場であったことも納得できますね。

極小空間の中に入ったとき、"時"が早く進んだり、逆に止まったり。反対方向に進んだり、急に2つに別れたり。そんな感覚を感じるかも知れません。特別な空間体験ですね。窓からの薄光、壁表面の肌理や造作の妙、畳から伝わる冷たさ。茶室のしつらえが客と主人にどんな心理効果を与え得るのか。

"時"の感覚を歪ませる場。ここで、「時間が飛翔する」