オーギュスト・ペレ

perret

オーギュスト・ペレ 
August Perret (1874-1954)

ペレはフランスの建築家です。古典から近代への転換期を生きた建築家ですね。

当時、土木の分野で使われ始めたコンクリート技術を、建築に初めて応用したのがこのペレでした。建築家としてボザール教授を務める古典建築の大家でしたが、一方では実務能力にも長けていた様です。

「建築」をコンクリートでつくることについては、保守的な人々は抵抗感や嫌悪感をもっていました。コンクリートは土木構造物に使うような下等で未知の材料だという固定観念がまだ根強く残っていたのです。「建築」は伝統的にレンガを使った積石造と決まっていました。なにより建築は芸術品でなくてはならなかったのです。

しかし、ペレは構造力学の専門知識があり、建物の骨組みを古い偏見にとらわれず合理的に考えることができる人物でした。コンクリートを建築に応用することの合理性やメリットを誰よりも早く理解していたはずです。

そうしたパイオニア精神はランシーの教会で結実します。

このようにペレはコンクリート技術を実践できる「近代人」でありながら、一方ではボザール教授として伝統を守る「古典人」であったことも注目に値します。コルビュジェも若い頃、ペレのもとで修行したことがあります。

彼はポール・ヴァレリーの推挙によってレジヨン・ドヌール勲章をもらい、学士院の会員にまでなりました。当時のフランスを代表する建築家として押しも押されもしない大御所でした。

ちなみに、ペレの次に現われたフランスを代表する建築家がル・コルビュジェです。2人には師弟関係がありますが、ペレの彼への評価は低いものです。コルビュジェはボザールから非常に嫌われていたのです。