アドルフ・ロース

loos

アドルフ・ロース
Adolf Loos (1870-1933)

ロースはウィーンで活動した建築家です。実作は少なく、理論家として有名ですね。「装飾と罪」はよく知られています。

彼が装飾を否定したのは、近代化が進む社会に便乗し単純に古典建築を攻撃するためではありません。ロースは時代を見通し、その中で新しい可能性を考え抜いた結果、近代建築にふさわしい「装飾」は存在しない。建築家はそれをつくりだすことができない。そう考えたからです。

ロースの設計に対する姿勢は非常にきびしいものでした。建築物の形態を追求する態度はとてもラディカルです。したがって、ロースが設計した建物が、外観は白い箱、窓は壁を四角く切り取っただけというイメージになるのは彼の形態に対する厳格な姿勢の現れといえますね。ここには、形態の純粋性を徹底して追求した建築家の真剣さが読み取れます。

ロースは「ラウム・プラン」という空間理論を主張しました。それは空間の配置と組織化、部分と全体の一環した調和といった観点から建築空間を組み立てるものです。

このようにロースが建築の設計で追求したことは、形態の純粋性と内部空間の組織化だったのです。

「装飾と罪」におけるロースの主張は、その言葉尻だけが後年一人歩きをしました。しかし彼の言いたかったことは古典建築を否定し、無装飾の四角い箱を称揚する単純な理屈でなかったことは明確です。

彼は同時代のウィーン・ゼセッションやユーゲント・シュティールを強く批判し、それらを時代遅れと考えていました。これは19世紀に生まれた建築家にしては大変するどい感覚です。現代の我々はそのシャープさを近代建築の歴史を参照しながら確かめることができるでしょう。キーワードは先程あげた「形態の純粋性と内部空間の組織化」です。