チェンバース

chambers

ウィリアム・チェンバース 
Sir William Chambers (1723-1796)

チェンバースは英国の建築家です。国王ジョージ三世の寵愛を受け、国家プロジェクトを手がけた大物ですね。

チェンバースの父はスコットランドの商人で、彼はスウェーデンで生まれました。16歳のとき東インド会社に入社し9年間中国やインドを渡り歩いています。この時の経験は彼の人生に大きな影響を与えました。

20歳後半から30歳前半にかけて、チェンバースはパリで建築を学び、イタリアで古典建築の本物に接しています。これがチェンバースにとって建築家になるための修行期間でした。

そしてロンドンにやって来たチェンバースは、皇太子時代のジョージ三世に出会います。将来国王となる皇太子の家庭教師に推薦されたのです。アジア諸国を渡り歩き、パリ、ローマで学んだチェンバースの豊かな経験が評価されたのですね。

出世の糸口をつかんだチェンバースは、その後国のお抱え建築家として重要施設の設計を手がけていきます。彼の作品は手堅いものが多いですが、英国の威厳と伝統が常に求められたことを考えると自然のなりゆきでしょう。

チェンバースの時代、英国には異国の地にある珍しい風物が貴族階級にもてはやされる傾向がありました。建築のデザインソースとして古代エジプトばかりでなく、中国やインドにも関心が払われたのです。オリエンタルな意匠によるちょっと変わったデザインが喜ばれたのですね。

チェンバースの建築はそのカウンターパートとしての存在感をもっていたとも考えられます。あるいは彼のデザインにもオリエンタルな香りが見出せるかもしれません。

英国の異国情緒好みは、この国がヨーロッパ随一の情報収集能力を持っていたことに裏打ちされています。海洋王国として世界の海をわたり歩くことのできる船舶技術を保有し、貿易による巨大な富を築いていたのですね。ロンドンには世界の情報が集まっていたことでしょう。