ウィリアム・モリス

morris

ウィリアム・モリス 
William Morris (1834-1896)

モリスはイギリスのデザイナー、作家、社会思想家です。「アーツ・アンド・クラフツ運動」の中心人物として建築界にも大きな影響を与えました。

モリスはジョン・ラスキンという思想家の影響を受け、中世ゴシックを理想と考えていました。ゴシックの美、そして職人の技。そうした中に文化芸術の理想を見い出していたのです。モリスはここから手工芸によって質の高い生活用品を生産し社会に供給するという目標を得たのです。

ウィリアム・モリスの存在感は非常に大きなものです。彼の人間像は、詩人あるいは思想家として社会や文化をするどく洞察し、自分の考えを思索できる一方で、現実的に行動しタフなビジネスを展開できる能力を合わせ持っていた点に特徴があると言えますね。

建築界におけるモリスの影響を「赤い家」と「モリス商会」からふれておきましょう。

「赤い家」は一軒家のプロトタイプを初めて提示した住宅建築の金字塔ですね。モリス25歳のとき、友人の建築家との共同作業によって実現した作品です。内装や家具もモリスの友人達がデザインしていますが、その質は極めて高いものでした。

「赤い家」はモリス自ら住むつもりで建てた家でしたが、経済的な理由で数年で他人の手に渡っています。

「赤い家」と同じ時期、モリスは壁紙や家具を扱う会社を起こします。手作りによる良質のデザインにこだわる点が特徴でした。この会社が後年「モリス商会」となります。

「モリス商会」は息の長い活動を展開し、身の周りのものに良質なデザインを求める顧客から愛されました。「モリス商会」の文化芸術に関する高い見識は、工場の大量生産に疑問を抱く人々や建築家を技師におとしめる風潮を懸念する人々にとって、心強い存在だったのです。

モリスは晩年、精力的に講演会を開催しました。ヨーロッパ各地の野心的な建築家たちは彼の思想と実践活動に大いに刺激を受けたようです。