55 重源の天竺様

浄土堂

浄土寺浄土堂1192
後白河院/重源
木造建築のアクロバットです。柱から肘木(ひじき)が突き出して軒を支える土台をつくっています。柱と肘木の関係については、言い方を変えると、肘木が柱の途中に刺さっている。こういうやり方は日本流でないとよく言われますが、「天竺様」という立派な名前が付けられています。そして「柱に刺さった肘木」を「挿肘木(さしひじき)」と呼んでいますね。これは天竺様の第一の特徴です。
ところで、天竺様でつくられた日本建築は全国に2つしか存在しません。それはこの浄土堂と東大寺南大門です。実は東大寺の大仏殿が天竺様の代表作でしたが、残念なことに戦国武将、松永久秀が戦いに破れたとき焼き払ってしまったのです。現在あるのは江戸時代の再建です。
天竺様は別名大仏様とも言い、重源が生み出した建築様式とされています。奈良の大仏を入れる巨大建造物を源平争乱の時代に唯一実現できたのが重源でした。木材の調達まで彼が手配しています。天竺様は重源が亡くなると消滅しました。
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