芸術と工学の両立 16/75

ken1062006-10-21

フィレンツェの捨子養育院です。ブルネレスキ、1420年代の作品です。捨子養育院はオスペダーレ・デッリ・イノチェンティ(Ospedale degli Innocenti)の日本語訳で、あまり聞き慣れない言葉かも知れません。文字通り、捨て子を養育する施設ですね。
この写真で見るように、柱がアーチを支えている感じが非常に軽快です。ブルネレスキは古代ローマの建築を調べ上げ、自身の才覚でドームやアーチを施工するために必要な工学的能力を習得しました。ここで石工などの経験に頼らなかった点が従来の建築家と異なるところです。この捨子養育院はそんなブルネレスキの才能が明確に表現されていることで知られていますね。
建築家は芸術家と違って工学の能力が必要だ。あるいは建築家はエンジニアと違って芸術の能力が必要だ。このように両側から建築家の職能を考えるといいでしょう。ちなみに「エンジニアと違って芸術の能力が必要だ」というのは、19世紀末あるいは20世紀になってからのセリフです。