北イタリアの郊外にある ラ・ロトンダ（ヴィラ・キャプラ） La Rotonda (Villa Capra) です。建築家パッラーディオが設計した貴族の館ですね。
「今日、町から３０分ほどの気持ちのよい高台にある豪邸、通称ロトンダ（パッラーディオ設計）を訪れた。たぶん、建築術上これ以上のぜいをつくしたものはけっしてあるまい。階段と玄関との占めている面積が、家屋そのものの面積よりもはるかに大きいのである。つまりどの側面から眺めても殿堂としての体裁を十分にそなえているようにできているのだ。内部は住むこともできるが、住み心地がいいとは言えない。ヴィチェンツァにて 9月21日、夕、1786年」（小考その6「ゲーテのイタリア紀行」 2005.11.30より引用）
この記述にあるように、ラ・ロトンダは高台に建っています。周囲からよく見える立地なわけですね。ゲーテはラ・ロトンダを、どの側面から眺めても殿堂としての体裁を十分にそなえていると書いています。平面図を見てみると完璧に上下と左右が対象です。こうした見事な建築ですから、ラ・ロトンダは建築の横綱として特別視され、各分野に大きな影響を与え続けていますね。ヨーロッパや米国で、ラ・ロトンダをコピーした建物がたくさん作られています。
しかし、この建築の真のよさは、北イタリアのこの地、ベネト地方の高台にあってこそ発揮されるはずです。場所が違えば、平面プランなり、屋根の色なり、壁の仕上げ方なり、設計に何らかの違いが生じるはずですね。建物は「すべて固有解」として成立したオーダーメイド商品です。
