02/75 代々木体育館

ken1062006-12-22

原宿にある代々木体育館は「吊り構造」の建築です。大屋根をケーブルで吊るすという大胆な構造で建てられました。設計者は丹下健三と構造家の坪井善勝氏です。この2人のコンビは伝説のように神々しく語られています。「丹下さんが構造の心配をし、坪井さんがデザインの心配をした」というエピソードが有名ですね。
「吊り構造」が採用された理由は、丹下自身のコメントによると15000人の観客を収容する大空間を圧迫感のないものとして実現することでした。「吊り構造」の特徴は鋼材のもつ張力の強さにあります。鋼材は引っぱりに強いのですね。
この建物の骨格は、左右の巨大支柱からワイヤーを渡して大屋根を吊るすという非常にダイナミックなものです。構造計算をする際、屋根を構成する一つ一つの部材の曲線が非常に複雑になり、カテナリーという懸垂線でそれぞれの曲線を近似して作図し、計算したようです。
強さと美しさが一気に保証されたのは「吊り構造」が持つ力学的な特性と幾何学的な美しさが、屋根を吊るすための回答として的中したからです。両者は共振して緊張感を生み出し、建物全体にひびいています。これこそが名作の秘密です。
この代々木体育館は1964年、東京オリンピックのために代々木国立屋内総合競技場として建設されました。