13/75 ガウディの合理性

ken1062007-01-11

ガウディ Antoni Gaudi の「3次元逆さ吊り実験」です。これは構造上合理的な形態を追求する実験で、発想のユニークさは他に類を見ません。「重力で下に引張られる力を180度逆にして、上向きの支える力と見なす」これがガウディの思いついた斬新なアイディアです。
そもそも彼の意図は、地元の石とレンガを使って伝統工法の組積造で建築をつくることにありました。特に安価でありながらオリジナルな形態をもつ建築にこだわったのです。
組積造によって建築をつくる場合、部材の内部応力は圧縮がメインになります。彼が着目したのは、一本のロープの両端を持って自然に垂らしたとき、カーブを描いてできる懸垂線です。力学的に見ると、ロープの各部分には重力による下向きの力が働いていますね。それなら、懸垂線を上下逆にすればロープの各部分には上向きの力が働いていることになります。ガウディは、この上向きの力が、その懸垂線の曲率に対して最も効率のいい支持力と考えました。これが組積造で発生する圧縮の抗力となる訳です。
ガウディは、現地調達の材料を用いた伝統工法によって、まったくオリジナルな建築を生み出した天才です。一見奔放に見えるデザインは、その背景に「3次元逆さ吊り実験」で発揮されたような合理主義精神の裏打ちがあったことは興味深いところですね。