41/75 式年遷宮

ken1062007-02-22

「建築」を後世に残す方法として伊勢神宮の「式年遷宮」は世界的に見てもユニークな方法です。建物自体は20年ごとに建替えてしまうので、実際に伊勢神宮を訪れてもそこには「新築」の社殿があるばかりです。
式年遷宮」は神事です。神さまをお移しするための様々な段取りや行事の全体が「式年遷宮」なので、建物を建替えることはその一部に過ぎません。創建当時から繰り返して来た「形式」を後世に伝えることが目的ですね。
したがって建築家的な目線で見れば、伊勢神宮の「式年遷宮」は建物ではなく建築の「形式」を伝える方法と考えることができます。ローマの遺跡のように2000年前の石が残っているのとは対照的です。
伊勢神宮は674年、天武天皇の時代にオリジナルの建物が造営されました。最初の式年遷宮は690年で、以来1300年間、現在までに61回行われています。途中、戦乱や資金不足で中止された時期もありました。そして「式年遷宮」を繰り返すうちにオリジナルの意匠が部分的に分からなくなっています。当初は高床式ではなく基壇の上にのっていたという説もありますね。敷地の広さや建物のレイアウト、垣根などは明治時代に大きく変更されています。
伊勢神宮は境内の構成もユニークです。全体が2つに別れていて、それそれが離れた場所に存在しています。外宮は伊勢湾から7kmくらい内陸に、内宮はそこからさらに6kmくらい内陸に入った所に位置しているのです。「式年遷宮」はこの内宮で行われますね。豊かな森のなかにある神聖な場所です。
伊勢神宮が建立された頃、日本は動乱の時代でした。644年「大化の改新」が起こり天智天皇が政権を握る。672年「壬申の乱」で天武天皇が政権を奪取。676年「朝鮮で新羅が半島を統一」伊勢神宮はこうした大事件が連続して起きていた時代の神社です。
ところで、日本には世界最古の木造建築、法隆寺があります。607年(飛鳥時代)につくられたお寺ですから、伊勢神宮より古いですね。法隆寺は20年ごとに建て替えなくとも1000年以上生き残ってきました。したがって技術的には1000年もたせる建物をつくることは可能だったのです。