ノイトラ

neutra

ノイトラ 
Richard Josef Neutra (1892-1970)

ノイトラは米国の建築家です。ロサンゼルスを拠点に住宅や学校などを手がけました。彼の作品はインターナショナルスタイルです。古典建築から完全に脱却した本物の「近代建築」でした。したがって、ノイトラは米国における近代建築のパイオニアと考えていい人物ですね。

ノイトラの建築はどれも周囲の環境と非常にうまくマッチしています。建物と自然の関係に対して鋭敏な感性をもっていたことが伺えます。

ところでノイトラを「米国の建築家」と紹介しましたが、彼は実はウィーン生まれのオーストリア人です。ノイトラはウィーンで建築を学び、20代はアドルフ・ロースの事務所で働いたり、ベルリンのメンデルゾーンと共同で仕事をするなど活動の拠点は欧州にあったのです。

ノイトラがアメリカに移住したのは31歳のときです。最初の2年間はシカゴに住み、地元の事務所で鉄骨構造の経験を積んでいます。

当時もシカゴはニューヨークと並ぶ先進的な都市で、1880年代にはシカゴ派と呼ばれる鉄骨構造の高層ビルが実現していました。ノイトラが来る40年以上前のことです。彼にとって「実験国家」アメリカのハイテク技術は魅惑的だったのかも知れません。

ちなみにノイトラが欧州からアメリカに移住した理由は、本場ヨーロッパの「近代建築」スピリットを米国に吹き込むためだったとされています。当時のアメリカ合衆国はボザールの古典建築が主流を占めて「近代」が建築に定着するのを妨げていたようです。米国内の心ある人々はヨーロッパで起きている前衛運動のインパクトをアメリカに与えられる建築家を探していたのですね。こうした状況の中、オリジナルの「近代」を知るノイトラが召還されたという訳です。

その後ノイトラはロサンゼルスに定住し、数々の名作を生んでいきました。