50/75 「崇高」

ken1062007-03-08

ブーレ Etienne-Louis Boullee の「ニュートン記念廟」1784年です。ニュートンを讃える記念館ですね。森羅万象の真理である「万有引力」を発見した偉大な天才にふさわしいのは巨大建築だ、という単刀直入なアイディアがもとになっています。「偉大」=「巨大」という訳ですね。
ここでは巨大球体を小宇宙に見立てて、内部はプラネタリュ−ムになっています。球体の直径は130m。暗闇の内部に、球面に穿たれた無数の小さな孔から太陽光が差し込み、星を表現するという単純な仕掛けです。
ブーレの設計主旨によると、「ニュートン記念廟」のオーバースケール感は、ニュートンの「崇高な精神」を讃えるためということになっています。「崇高」sublime という概念はブーレ達、幻視の建築家の作品がもつ特異な性質を最も的確に表現するキーワードです。
この「崇高」については、エドムント・バーク Edmund Burke の著作「崇高と美の観念の起源」1757年 を参照するといいでしょう。バークによると「崇高」を生み出すものとして、恐怖、曖昧さ、力能、欠如、広大さ、無限、継起と斉一性(同じモチーフの限りない繰り返し)などを挙げています。
バークの考え方は、人間が美しいと感じるものを基準にして、この基準から大きく逸脱するようなものが「崇高」だということになりますね。