6. エッセンスの応用

人間のおもい 2004.11.23

瀧口修造氏の書斎。当時、東京の西落合に存在した「小宇宙」です。瀧口修造はシュールレアリスムの詩人です。1903年富山県に医者の息子として生まれ、慶応義塾大学に学びました。生涯を通じて美術活動を貫き1979年に他界しています。ブルトンやデュシャンと…

豊かな空間 2004.11.14

鎌倉にある神奈川県立近代美術館のテラスです。とても気持ちのいい場所です。テラスは平家池に面しており、季節によって違った表情を見せてくれます。写真の上は冬の様子、下は夏の様子です。池にはたくさんのハスが植えられていて、夏の暑い時期は生い茂っ…

ヒューマンスケール 2004.10.25

レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「ウィトルウィウス的人間」です。ユーロ硬貨の図柄に使われるほどですから、広く知られた絵だと思います。ベネチアのアカデミア美術館所蔵ですね。彼が残した膨大なノートの中から見つかりました。さて、ダ・ヴィンチがこ…

memory 2004.10.19

In this photo we can see quite unique gallery where extraordinary number of antiques are exhibited. This gallery is in Sir John Soane's Museum in London. These antiques were collected by Soane himself. And this Muesum was his private house…

部分と全体 2004.12.01

セザンヌの「ローブから見たサント=ヴィクトワ−ル山」の部分詳細です。彼はこの絵を書いた1906年に亡くなります。セザンヌの存在は19世紀の印象派と20世紀の現代美術をリンクさせる極めて重要なものとなりました。光と色彩をありのままに描いた印象派に対し…

構築すること 2004.11.13

「構築すること」に対して、岩山にくり抜かれた洞窟を考えてみます。 まず洞窟を建築物だと思ってみましょう。最初に思い浮かぶ特徴は外観がないことです。外観がないということは窓や屋根が存在しないということですね。建築にとって窓や屋根はちょっと特別…

「大自然」と都市 2004.11.12

「大自然」は人間の力が及ばない大きな存在です。コントロールすることができないのはもちろん、全体像をイメージすることもできないと考えています。一方、都市は逆に人間がつくったもので、建築の延長上の存在です。人間のイマジネーションの中にあるはず…

ものと形式 2004.11.09

建築が1000年以上生き残るにはどうしたらいいのでしょうか。伊勢神宮は20年ごとに建替え続けることで1300年以上の年月をしのいできました。「式年遷宮」です。「式年遷宮」とは、写真で見るように隣の敷地に新しく建物を造営し、神様をお移しする神事ですね…

水平と垂直 2004.11.07

1922年米国シカゴで新聞社の国際コンペが行われました。ここで「水平と垂直」が近代と古典の対比として明確に表現されたのです。 このコンペはシカゴ・トリビューン社が開催したものです。賞金総額10万ドルの大きなコンペで、米国とヨーロッパを中心に250…

建築様式 2004.10.29

本流からはずれた建築です。おかしなデザインです。これはジュリオ・ロマーノという建築家によって設計された貴族の館ですね。1534年イタリアのマニトバにつくられました。パラッツオ・デル・テと呼ばれています。しかしこの建築、同時代のセルリオやヴァザ…

用強美 2004.10.10

用強美とは建築の持つべきエッセンスです。「用」をたす。「強」い。「美」しい。この言葉を最初に使ったのはウィトルウィウスとされています。彼はローマ時代の建築家でシーザーやクレオパトラ、そしてアウグストゥスなどが歴史を刻んでいた激動の時代に生…

自然と人工 2004.10.08

自然の背後には「大自然」がある。そして人工の背後には「人間」の存在がある。このような断言からこの話を始めましょう。ここで「大自然」も「人間」も概念であり、イメージであることに注意してください。 さて、ただ「大自然」といってもつかみどころがあ…

時の経過 2004.12.06

建築家ジョン・ソーンが「時の経過」に対して特別な思い入れがあったことをもの語るドローイングです。描いたのは彼のドラフトマンだったジョセフ・ガンディー。1798年頃のものです。 ジョン・ソーンは英国の建築家ですね。これはイングランド銀行のロトンダ…

祭り 2004.11.21

祭りと建築は似ています。どちらも社会的な行為です。多くの人々が熱くなるところも共通ですね。普段と違う楽しさや大変さをみんなと分かち合うのが醍醐味です。 祭りは人々のパワーを引き出します。織田信長は多くの人足を動員して突貫工事をよく行いました…

ゲニウス・ロキ 2004.10.13

庭園をこの絵の風景のようにつくることをピクチュアレスクといいます。18世紀のイギリスで始まりました。ピクチュアレスクという言葉は1720年頃、詩人のアレグザンダー・ポープと建築家のジョン・バンブラが考えたとされています。絵に描かれた風景のように…

抵抗の形式 2004.10.09

スーパースタジオの“スーパーサ−フェス”です。スーパースタジオはイタリアのクリエーター集団で都市や建築を通して現代社会の矛盾点をえぐり出すラディカルな提案を行っていました。この“スーパーサ−フェス”もその一つで1970年初めに制作されました。テクノ…

動かない 2004.10.07

ロシアの建築家イワン・レオニドフが描いたドローイングです。建物が地面から浮きあがり、重力から解放されたかのようです。建築は「動かない」ものですが、軽さや浮遊感は憧れのイメージです。レオニドフのドローイングにはしばしば飛行船や飛行機が登場し…

壁 2004.12.17

これは「4次元空間のカラーコンストラクション」と題されたドローイングです。デ・スティルという1920年代に起こった芸術運動の中心的存在だったドウ−スブルフが描いたものです。ここには特筆すべきアイディアが表現されています。それはタイトルにある通り…

エネルギーの塊 2004.12.13

21世紀はテクノロジーの否定から始まった。 2001年9月11日、ニューヨークで起きたワールド・トレードセンタービルへのテロ攻撃は20世紀に人類が獲得した英知とその産物が一瞬にして「否定」されたことを示しています。もっとも、この出来事が宗教間の報復合…

垂直線 2004.12.12

現在、「世界で一番高い建物」はカナダのトロントにあるCNタワーです。高さ553m。この写真がそうです。ここで言う「建物」とは、鉄塔やタワーを含む構築物全般を指しています。例えばタワーの中には、3階建てにもかかわらず100m以上ある場合もありますね。…

図面と模型 2004.12.04

この絵はベラスケスの「ラス・メニーナス」(侍女たち)です。1656年、スペインで描かれました。プラド美術館を代表する作品ですね。この絵画はご存知のように、興味深いトリックに満ちています。それは絵を見る立場と絵に描かれる立場が逆転するかのような…

開口部 2004.11.29

これは哲学者ヴィトゲンシュタインが設計した住宅です。実姉のストロンボウ夫人からの依頼でした。所在地はオーストリアのウイーンです。ヴィトゲンシュタインは建築設計のプロではなかったので、アドルフ・ロースの弟子だったエンゲルマンを共同設計者とし…

建物の重さ 2004.11.28

ザハ・ハディドの「ザ・ピーク」コンペ当選案です。ザハ・ハディドはイラク生まれの英国建築家ですね。このドローイングは彼女が1983年頃描いたものです。建築が分解し飛散するようなイメージは、建物が重力から解放されたことを示しています。そして同時に…

湿度こそ決定的 2004.11.27

奈良の正倉院です。中には日本の伝統そのもののような重要な財宝が収められていますね。1000年以上もの間、日差しや湿気から財宝を守ってきました。秘密はこの建物の特徴でもある高床式の床と校倉(あぜくら)造り及び板倉(いたくら)造りの壁でした。建物…

スペースを分ける床と壁 2004.11.26

これは1986年に復元されたミ−スのバルセロナ館です。オリジナルはバルセロナ万博のドイツ館で1929年に建設されました。透明感あふれるみごとな空間が演出されています。壁の絶妙な配置によって自然光を内部へ導き入れています。囲い込む壁が光を受け反射して…

柱 2004.11.18

大阪の梅田スカイビルです。連結超高層のエポックですね。建築家原広司氏と構造家木村俊彦氏の共同作品です。「庭園を空に浮かせたい」という建築家のイメージと、「頭にまぐさ(横材)を載せると複数の建物でも安定する」という構造家のアイディアがみごと…

すべて固有解 2004.11.10

ル・コルビュジェは「建築をめざして」1923年 のなかで、ギリシア神殿と自動車の写真を並べて、建築の生産も自家用車のように標準化するべきだと主張しました。そして車同様、建築も必要に応じた機能を明確にもって、道具に徹するべきだと説きます。コルビュ…

自重との戦い

スペインカタルニアの建築家ガウディの行った構造力学に関する実験は、重力に対するガウディの意識の高さを示しています。彼の意図は地元の石とレンガを使って伝統工法の組積造を用いた安価でオリジナルな建築を創造することでした。彼が着目したのは、一本…

寸法 2004.11.02

ル・コルビュジェのスケッチです。「モジュロールの尺度の習作」というタイトルがつけられています。モジュロールはコルビュジェが考案した新しい寸法体系で、建築にとどまらず、あらゆる工業製品の基準寸法として広く普及することが期待されていました。モ…

一期一会の建物つくり 2004.10.27

この写真はポンピド−センターの建設前につくられたコンセプト模型です。我々が知っている外見とはだいぶ違っていますね。この模型で示されているコンセプトとして重要なのは、展示室や収蔵庫がコンテナの中に収められていること、巨大な2枚のスクリーン壁に…